人口1.5万人の町にできたコワーキングスペースのような研究所~Gokalab.誕生ストーリーvol.1~

コラム 2023.04.07

長野県御代田町に2022年11月オープンした、コワーキングスペースのような研究所 Gokalab.。施設コンセプトは「はたらくが広がる研究所」。 どのようにしてこの施設が生まれたのか、何を目指しているのかを、立ち上げにかかわった3名に話してもらいました。

井上拓磨(イノウエ)

Gokalab.の運営会社であるはたらクリエイトの代表取締役。愛知県名古屋市出身で、現在は上田市在住。口ぐせは「あとはよろしく」。

大北達也(うまたつ)

東京のIT系サービス会社に勤めるサラリーマン。2018年に御代田町へ移住。Gokalab.の立ち上げに関わる、自称「圧倒的当事者意識の高い研究員」。

聞き手:高橋遼(りょう)
東京のマーケティング会社に所属。2021年に鳥取県へ移住。イノウエとの腐れ縁により、Gokalab.の立ち上げに関わる。しかしまだ1度も現地に来たことはない。

人口1.5万人の町。なぜ御代田町を選んだの?

まず最初に、なぜ御代田町だったのかについて話してみましょうか。

2019年以降のコロナ禍で、地方移住への関心がとても高まりましたよね。東京で暮らす人たちが選ぶ移住先として、軽井沢などの長野県東信エリアに人気が集まっている。

自然豊かな場所である上に、都心へのアクセスもよいという理由が大きかったですね。それだけではなく、風越学園や大日向小・中学校など、特徴のある教育方針を打ち出している学校があることも理由だと思います。

※2021年時点のデータ

数字を見るとすごい増加率ですね。

そんなとき、御代田町から相談があったんです。「男性は東京の企業の仕事をフルリモートで継続できているが、女性は退職をしてこちらに来ている人が多い。仕事を探すものの、希望に合う就職先がないようだ」といったもの。

イノウエさんの会社(はたらクリエイト)は、子育て中の女性が活躍しているIT企業だしね。御代田にオフィスを作ってほしいというような相談だったんだ。

ただ、どういう人たちが移住に来ているのか把握できていない中、僕たちがオフィスを作ったところで、ニーズとマッチしなかったらどうしようと悩んだんですよ。

たしかにそうですね。

これまでこの地域にいなかった層の人たちが集まっているなら、まずは知ることからはじめたいと思ったんだよね。知るためにはつながれる場所を作ればいいのではないかと考えた。

そういう意味では、御代田町は軽井沢町にも佐久市にも小諸市にも隣接していて、いろんな市町村から来てもらえると思ったんですよね。

JAの空き店舗が活用できそうだという話を聞いて、実際にこの建物を見たときに「あ、ここがいいな!」って直感で決めて。そこから御代田町で施設を作る話が進んでいきました。

移住者20名へのリアリングから見えてきたこと

Gokalab.はコワーキングスペースのような研究所としているじゃないですか。「ようなってなんだよ」とツッコみたい人も多いのではと思うのですが…。なぜ、コワーキングスペースにしようと思ったんですか?

いろんな人とつながれる場所と考えたとき、やはり最初に頭に浮かんだのはコワーキングスペースだったんだよね。

僕がイノウエさんに「御代田にコワーキングスペースがあったらいいな」ってずっと伝え続けていたこともありますけど(笑)。佐久市や軽井沢にはあるのに、御代田にはなかったので。

うまたつとは移住にきた直後から知り合いなんだけど、うちの佐久オフィスに焚き火ができるテラスを作ったり、サウナ小屋を建てたりしたのは、全部うまたつの「あったらいいな」から生まれているんだよ。

すごい影響力(笑)。

僕たちの会社のVisionは「はたらくをクリエイトすることで仕事を楽しむ人を増やす」。はたらくをキーワードに、うまたつのようなおもしろい人間がたくさん集まるような場所が作れると、おもしろいコトも生まれそうだなという予感はしていたんだよね。

なるほど。

とはいえ、みんなが期待しているものと違うものができても仕方がないから、課題とかニーズを調査することから始めたんですよ。

僕の知り合いを中心に、御代田周辺に移住に来た人20名をはたクリのサウナに招待してヒアリングをしました。当時はみんなリモートワークが中心で、家にばかりいるのは飽きてしまう、という声が多かったですね。

わかるな。家で仕事していると、家族と会社の人としか話さなくなっちゃう。

子どもの送り迎えで、保護者の方と話すこともありますけど、やはりそういう場では仕事の話より、子どもやライフに関する話が多くなります。

仕事に関するシェア空間でないと、仕事の話はしにくいということが明らかになったよね。

地域との接点を作る場所としてのコワーキングスペース

みなさんの話を聞いていると、地域との関わり・つながりみたいなのを作りたいという思いがあることも知りました。

僕も移住したからわかりますが、移住した割に東京の仕事だけしていると違和感あるんですよね。

せっかくこの地域に来たのなら、ここでしかできないこと、ここでしか出会えない人と関わりを持ちたいじゃないですか。

たしかに、御代田に来てから東京とは違う時間が流れているなと感じます。東京ではなかなか出会えないような人とつながれるおもしろさはありますね。たとえば、木こりとか、狩猟をしてジビエ料理を作る人とか。

地方で出会ったおもしろいヒトと、おもしろいことをやってみたいなと考えることは多いですね。

すぐにはビジネスにならなくても、まずは関わりを持つ、そしてつながりを作る。そのために、顔見知りの人と気軽に雑談ができるワークスペースがあったらいいだろうと思ったんですよ。

コネクトする場所ですね。

仕事は東京、暮らしは地方。そういう人たちが行ったり来たりする中で、両方の情報や文化がミックスされている。御代田町を中心とした東信エリアが、今まさにそういった新しい場所になっていると感じています。

続きはVol.2でお届けします。施設ビジョンである「はたらくが広がる」とは一体何なのかについて、さらに深く掘り下げていきます。