東御のワイナリーも菅平のレタスも塩田平の奇祭も…!サンラインエリアの気候にその秘密があった

コラム 2021.09.15

長野県の東側、ここサンラインエリアは、降水量が少なく晴天率が高いと言われています。実際、県外から上田市や佐久市、東御市、御代田町などに移住した人からは「雨、全然降らないね」「夏は昼間暑くても、夜になると涼しいね」「湿度低いよね? このカラっとした爽快感がたまらない!」といった声が聞こえます。そこで今回は、サンラインエリアの気候をクローズアップ。全国にもファンがいる東御のワイナリーや菅平のレタスなども、その背景には気候が大きく影響しています。さぁ、一緒にその秘密を見ていきましょう。

サンラインエリアの特徴は「少雨」「日照時間長い」「寒暖差が激しい」

サンラインエリア内の各自治体のホームページを見ると、ほとんどで「一年を通じて晴天率が高く年間の降水量が少ない、全国でも有数の少雨乾燥地帯」と言った特徴が挙げられています。

晴れた日の上田市柳町

また長野地方気象台のホームページも、長野盆地から上田・佐久盆地について「北海道東部についで雨の少ない地域となっています」と紹介しています。

※写真はイメージです

ではその実情について、気象台発表のデータに基づき、サンラインエリア内の3観測地点と東京を比較しながら見ていきましょう。

上田:サンラインエリア内で一番人口が多い都市。千曲川を中心とした盆地
菅平:上田市の郊外の高原。国内トップアスリートも集うスポーツ高地合宿の場として有名。レタスなど高原野菜も人気が高い
東御:上田市の隣町。市の面積の半分以上が山林、4分の1が田畑と豊かな自然に囲まれている。ワイナリーエリアとしても有名

4地点における気象データ(2020年)

年間平均気温(℃) 最高気温(℃) 最低気温(℃) 年間日照時間(h) 年間降水量(mm)
上田(古里/標高502m) 12.8 37.6 -9.6 2,237.2 989
菅平(標高1253m) 7.2 29.5 -22 1,857.9 1,283
東御(標高958m) 10.1 33 -12.8 2,106.6 1,079
東京(千代田区/標高25.2m) 16.5 37.3 -2.1 1,889.5 1,590

こうして表にしてみると、例えば上田と東京の最高気温はほぼ同じですが、最低気温は7度以上もの差があり、寒暖の差が激しいことがよくわかります。日照時間と降水量についても、東京と比べてみて日照時間は長く降水量も少ないですね。雨量に関しては、日本で最も多雨とも言われる屋久島における2020年の降水量が4837.5mmですから、上田はその約5分の1の量。サンラインエリアの市町村が少雨をうたうのも納得です。

サンラインエリアの気候の特徴がわかったところで、その特徴から生まれた取り組みや文化、農業などを、次の見出しから紹介していきます。

【参考】
国土交通省 気象庁『過去の気象データ検索
長野地方気象台『長野県の気候
上田市『信州上田観光情報 気候風土
東御市『“とうみ”ってどんなまち?

少雨に備えてため池あり! 反物がはためく雨乞いの奇祭も

まずは少雨に注目してみましょう。降水量が少ないと水不足が心配になりますよね。上田市では塩田平を中心に昔からのため池がたくさんあり、農業用水を確保しています。その数、大小合わせてなんと約100カ所! このため、少雨でも深刻な水不足は免れているようです。

※写真はイメージです

またこのエリアには、国の選択無形民俗文化財に指定されている雨乞いの奇祭岳の幟(たけののぼり)があります。この祭りの起源は、16世紀初めの室町時代。大干ばつに見舞われた際、現在の上田市と青木村の境にある夫神岳(おがみだけ)に九頭竜権現をまつり、「雨を降らしてくれたら毎年できる限りの布を献上する」と祈願したところ、雨が降ったことが始まりなのだそうです。それからは毎年、布を竹ざおに付けて夫神岳に登り、感謝と祈願をするようになったとか。

読者提供写真

現在では、塩田平にほど近い別所温泉で、青竹に色鮮やかなの反物をくくりつけた幟の行列が練り歩き、踊りや三頭獅子舞も奉納されます。毎年7月15日に近い日曜に開催されていますが、第518回となる今年は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、残念ながら開催中止となりました。来年は幟の行列が見られるといいですね。

【参考】
塩田まちづくり協議会『塩田平の文化財 -雨乞いの奇祭「岳の幟」-
公益財団法人 八十二財団『別所温泉の岳の幟行事
上田市『信州上田観光情報 第518回 岳の幟
塩田の里交流館(愛称とっこ館)『塩田平のため池群

太陽光を有効活用! 再生可能エネルギーに注目

次は日照時間です。前述したサンラインエリア内の3カ所で最も日照時間が長かった上田。2020年の年間日照時間は2,237.2時間で、これは、日本で最も日照時間が短いとも言われている秋田の1,535.7時間と比べても、その差は明らか。

有効活用の方法として注目されるのは、再生可能エネルギー発電である太陽光発電。総務省統計局のデータによると、都道府県別でみた太陽光を利用した発電機器を設置している割合が、長野県は8.5%で全国第2位。普及率が高さが伺えます。

※写真はイメージです

ではいったいどのくらい発電しているのでしょうか? 一例として、上田市在住である筆者宅のデータを紹介します。屋根に乗せている太陽光パネルは8.4kW、オール電化です。

太陽光による年別発電量&売電量

上田市の年間日照時間(h) 年間発電量(kWh) 売電(kWh)
2020年:2,237.2 10,677.2 9,370
2019年:2,268.6 10,920.3 9,530

蓄電池を設置していないため、太陽光パネルで発電した電力は、自家消費した分を除き、電力会社に売電しています。上記の表を見ての通り、発電した電力のうち約9割を売電している計算に。

筆者宅の太陽光モニター。この時点では98%を売電

社会的関心が高まるSDGs7番目の目標は「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」。太陽光を自然エネルギーとして再生できていることで、少しでも貢献できているという実感を得られます。さらに、太陽さえ出ていれば停電などの非常時でも電力を確保できるのは心強いです。

また、サンラインエリア内で車を走らせていて目にするのが、日当たりのよい土地にずらーっと並ぶ大規模な太陽光パネル

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大規模な太陽光発電施設については、建設・設置に関して森林伐採による景観の変化や水害への懸念から反対する動きがあります。そのため、長野県をはじめとし、太陽光発電施設に建設に関する条例を設ける自治体も増えています。大規模な太陽光発電施設との上手な付き合い方はこれからも模索が続きそうです。

【参考】
政府統計の総合窓口(e-Stat)『住宅・土地統計調査 平成30年住宅・土地統計調査 主要統計表
長野県『太陽光発電事業に対する長野県の取組等

寒暖差がもたらす恵みの数々!

では最後に、気温が大きく関わる農作物を見ていきましょう。一般的に、昼間は暑く夜になると冷え込むという寒暖差に加え、雨が少ない環境で作られた農産物は、糖度がアップし、味が良くなると言われています。サンラインエリアは、まさにその条件が当てはまり、果物や高原野菜の栽培が盛んです

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サンラインエリアを含め長野県の多くの地域で栽培されているリンゴは、都道府県別の収穫量が青森に次いで第2位、ブドウも全国第1位の山梨県とほぼ差がない第2位に。ワイン用ブドウの生産量は全国第1位です。東御市をはじめ、上田市や小諸市、坂城町、立科町など、このエリアにいくつものワイナリーがあるのも納得です。

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果物に加え、菅平高原や小諸市、御代田町、軽井沢町、佐久市、立科町、佐久穂町などでは、冷涼な気候を活かして栽培される野菜の代表格であるレタスも有名です。

※写真はイメージです

昼夜の温度差により、レタスがミネラルや糖分をしっかり蓄え、非常に甘く、うまみのあるレタスに仕上がるのだそうです。

【参考】
農林水産省 農林水産統計『作物統計調査 令和2年産りんごの結果樹面積、収穫量及び出荷量
農林水産省 農林水産統計『作物統計調査 令和2年産日本なし、ぶどうの結果樹面積、収穫量及び出荷量
長野県『知ってる?信州農産物

気候の影響で生まれる、この土地の魅力を堪能して

サンラインエリアの気候、いかがでしたか? 地形や地質などによって特徴付けられる気候は、その土地に暮らす人々の生活風土文化産業にも大きな影響をもたらします。普段は深く考えることのない日照時間や雨量、気温も、実は私たちの生活に深く関わっており、首都圏などからの移住地としても人気が高いこのエリアの魅力に繋がっているのですね! お祭り、農作物、太陽エネルギーなどこのエリアだからこそ生み出される恵みの数々を、サンラインエリア内外を問わず、多くの人に楽しみながら味わってほしいです。

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