あれ!? の連続… だからおもしろい! 中古住宅をリノベーションする【後編】

コラム 2022.08.18

2021年早春から始まった堀野晃正さん家族の中古住宅リノベーション。前編では、解体予定だった中古住宅を買い取り、家具や残っていた物を自分たちで片付け、DIYに向けた準備の過程をお伝えしました。

後編では、実際にDIYする様子や、リノベーションして感じたこと、住んでみた感想などを伺いました。

あれ!? うまくいかない…炭を混ぜた漆喰壁

ーー前編で話を伺った後、2021年9月にいよいよ作業が始まりましたね。実際に作業をして、まず感じたのはどんなことでしょうか?

堀野:作業を開始してまず気付いたのが、作業工程が思ったよりハードだということです。壁塗りやタイル運びなど力仕事が多く、作業していると腕がぷるぷる…! それが嫌というわけではなく、むしろ心地よいのですが、想像していたより本当にハードでしたね。

ーー実験したいとおっしゃっていた漆喰壁。実際やってみてどうでしたか? 

堀野:漆喰壁は塗る前の処理が多い! これは実際にやってみて気付いたことの一つです。壁にただ漆喰を塗ればいいと思っていたんですが、見積もりが甘かった。工程としては、まず隙間を埋め、崩れている部分や穴を補修し、アク止めや砂壁がボロボロするのを防ぐための下塗りをして、それからようやく漆喰を塗るという流れ。リビングとそれぞれの個室も漆喰を塗ったので、仕上げまでけっこう時間がかかりましたね。

ーー漆喰は色にこだわりたいとおっしゃっていましたよね。灰を入れてグレーにする実験はどうなりましたか?

堀野:イメージ通りの色にするため漆喰の粉に炭をどのくらい混ぜるとよいのか、いろいろ試してみました。

ーーまさに実験ですね!

堀野:まずは希望の色味を出すため、少量でテストすることに。炭の投入量を何パターンか試し、色の比較をしました。しかし、いざ始めてみると我が家には0.1g単位で測るデジタルスケールしかなく、試す量が少ないと微調整ができない! と気付いたんです。試行錯誤の末、漆喰粉に対し炭を1.5%投入するのがよいかもと思ったんですが、ちょっと自信が持てなかったので、1.3%にしてみたんです。

ーー実際の仕上がりは?

堀野:1.3%でも濃かった! 炭の量は1%で良かったみたいです。妻は「1%でよい!」と主張していたので、「すみません…」という言葉しかありません。

堀野:こうなったら塗りながら調整していくしかないということになり、最初に塗った面は1.3%ですが、反対側は1.0%に。場所によって若干色味が違う仕上がりになっています。

ーーこれから漆喰塗りにチャレンジしたい人へ、経験者の堀野さんだからこそのアドバイスはありますか?

堀野:炭を混ぜる場合はきれいに混ぜることにこだわりすぎないことです。お世話になったセルフビルドパートナーのえんがわ商店さんに教えてもらったり、ネットで見たり勉強はしたのですが、漆喰粉に炭をまぜるのってプロでも難しいようなんです。自分ではしっかり混ぜたつもりでも、実際に塗ってみると混ざりきらなかった炭が黒く線になって現れていました。それはそれで味になったと納得していますが、本当に奥が深い!

あれ!? びっくり! 床をはいだら、まさかの…

ーー作業にあたり、壁を壊したり床をはいだら想定外の跡があったと聞きましたが、それは一体!?

堀野:実は、シロアリに食べられていた跡があったんです!

ーー出た! シロアリ!!

堀野:やられていました…。台所の柱と洗面所の土台、大引、柱、壁の下地が無惨な姿になっていました。

ーーリノベーションするにあたって、支障はなかったのでしょうか?

堀野:よく見ると、相当古い痕跡だったようです。なので、特に消毒・駆除はしていません。洗面所は食べられた上に湿気で腐っている部分もあり、柱や壁の一部が機能してないという…。家が潰れても困るので、どうしたらよいのかえんがわ商店さんに相談し、対策をとりました。

ーー具体的にはどのように?

堀野:柱を変えるとなると壁も崩すなどの大掛かりな工事になり、費用や工期もかさむため避けることにしました。そのため、台所は、両脇の被害を受けていない柱を厚めの合板でつないで壁全体で支えるようにしました。洗面所については、湿気もあり基礎がそのままだと厳しかったため土台から作り直しを。柱に添え木をし、壁の下地も作り直しました。こうしてシロアリ跡は乗り切りました!

ーーえんがわ商店さん、心強いですね。

左から、TUGU設計室の荻原朱美さん、堀野さん、えんがわ商店の渡辺正寿さん

あれ!? 意外といい感じ! 和タンスや床板の再利用

ーー前編では、前家主から引き継いだものは最大限に活かしたいとおっしゃっていましたが、実際はどうでしたか?

堀野:換気扇横の棚をみてください(キッチン一角上部の棚を指差す堀野さん)。

ーーあの棚が何か?

堀野:前の家主さんが使っていた和ダンスなんですよ! この物件を購入した際に残っていたガス台や洗濯機、ベッドの枠などは、希望してくださった人にお譲りできたのですが、和ダンスは引き取り手がいなくて。でも、そのまま処分するのも忍びないと思っていたところ、吊るしちゃおう! と。幅も高さもキッチン上部の棚にぴったりだったんです。

ーーまさかあの棚が和ダンスだったとは! すばらしい再利用ですね! ほかに前家主さんから引き継いだものはありますか?

堀野:キッチンの床をリビングの壁に貼りました。これは大工さんのアイデア。すごくいい床板だから何かに活かせないかと考えてくださったんです。また同じ床材を使って壁に備え付けた分電盤の台にしました。使い込まれた床板をリメイクでき、嬉しく思います。

あれ!? の連続でも、みんながいたから乗り切れた

ーー想定外の連続で、大変でしたね。

堀野:周りの人の助けがあったからこそ、乗り切れたんです。人手が必要な作業の日は、たくさんの同僚や知人が手伝いにきてくれて、とても助かりました。

ーーどのようなことを手伝ってくださったんですか?

堀野:壁やペンキを塗ってもらったり、タイルを貼ってもらったりしました。3人の同僚に来てもらった時は個室の漆喰壁を塗ってもらったのですが、それぞれの個性が塗り方に表れたのがおもしろかったですね。「ここはものすごくキレイだね、すごい!」「あれ? こっちはムラがある?」 みたいな。でも、それも含めてDIYのおもしろさ。手伝っていただいたことが嬉しく、感謝しています。

ーータイル貼りも細かくて大変そうですよね。

堀野:そうなんですよ! 工程が多くて時間がかかるタイル貼りはえんがわ商店さんとTUGU設計室の荻原さんに手伝っていただきました。作業手順は、タイルを貼って、目地を埋めて、目地材の乾き具合を見計らって余分な目地材を拭う。特に、乾き具合の見極めが難しくて。しかも、この余分な目地を拭うという作業を3回繰り返すのですが、拭う際に目地材を削ってしまったり、まだ乾き具合が甘くて伸びてしまったりしたこともありました。縦と横のラインをそろえるのも難しいです。お二人のお力添えがなければ、到底無理だったと思います。本当に感謝しています。

実際に住んでみて…まだまだ試行錯誤を楽しみたい!

ーーリノベーションを振り返り、改めて感想を教えてください。

堀野:思い通りに行かないことが多々ありましたが、それも含めて、非常に味のある家になったと思っています。全体的に作り込み過ぎなかったのもよかったですね。本当は、リビングに小上がりや作り付けの棚を備えたかったけれど、予算の関係もあり作りませんでした。その結果、自由度が高くなったと感じています。作り付けではない家具なら、いざというとき次の家へも持っていけますしね。さらに、予定外だった大きめのソファやスピーカーを置いたりすることができ気に入っています。

堀野:これから住んでいくうちに、必要に応じて後からまたDIYすればいいかなと。住んでみたからこそ「もっとこうしたい」という点はたくさん出てくるでしょうしね。

ーー実際にDIYしたものはありますか?

堀野:もともと備えられていた古い扉に明るい色のペンキを塗ったり、壁に壁紙を貼ったりして雰囲気を変えました。家族で作業して楽しかったですよ。

写真:加倉井 和人

堀野:あとは、リノベーションするために出た古材や余った木材で机や棚をDIYしました。

ーー今後、予定している「もっとこうしたい」はありますか?

堀野: 扉を1枚付けることを考えています。リビングの暖房はペレットストーブでまかなう予定だったのですが、熱量がまったく足りず、寒くて寒くて。リビングにつながる廊下から風が入ってきているとわかったため、改善策として、冬までに扉を付ける予定です。

ーー暮らしながら、日々バージョンアップ! いいですね。

堀野:これから先、この扉以外にもきっとまた改善したいことが出てくると思っていますが、試行錯誤をしながら楽しんでいきたいと思っています。家族にとっての「今」を大切にし、その都度自分たちの暮らしを作り上げていきたいですね。

写真:加倉井 和人
写真:加倉井 和人
お話を伺っている時も、終始楽しそうだった堀野さん。どんなことにも前向きにチャレンジする堀野さんは、きっとこれからもその時々の自分たちの心地よい空間を実現していくことでしょう! 堀野さん、ありがとうございました。

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