「生まれ変わりたいと思ってここへきた」移住ハイを通して見えてきたこと~御代田町 小島美里さん~

インタビュー 2021.06.18

2017年に東京都港区から御代田町へ移住した小島美里さん。フリーランスのクリエイティブ・ディレクターとして、相方であるライター・ラジオパーソナリティの細川敦子さんとともにteam OHAYASHIを結成。軽井沢・御代田町を中心にまちの広告屋さんとして活動されています。

プライベートでは2017年に結婚した夫と、3歳の娘、猫のio(イオ)との3人+1匹暮らし。移住を機に夫は地元の企業へ転職し、家族みんなで自然豊かな御代田町での生活を楽しんでいるそうです。2021年にはこだわりを詰め込んだような、新築の家を建設…。

と、誰もがうらやむような移住生活を送っているように見える小島さん。インタビューでもキラキラしたお話がたくさん出てくるのかと思いきや、まず飛び出てきたのは、東京にいた頃の荒れてたお話…!

小島さん、キラキラの部分もブラックな部分も、全部見せてください!!

「疲れちゃってたんだよね」。自分を浪費していた東京での暮らし

ーー長野に来る前はどんな生活をされていたんですか?

小島:出身は新潟県で、海の近くで育ちました。大学進学をきっかけに東京で暮らし始め、卒業後は広告代理店に勤めてたんです。ものすごく疲れてましたね…! 中目黒の駅のホームで、一人パチパチPC叩いてたら終電逃しちゃった、なんてこともありました(笑)。

ーーかなりハードにお仕事されていたんですね。

小島:ひとつディレクションするにも上の確認をとらなきゃいけないような、大きな会社に勤めていて。下っ端でしたけどね。自分の思うディレクションというよりは、会社に求められるディレクションをしなければならなくて、それが私にとってはすごく苦しかったなぁ。こちら、東京にいた頃の私です。

ーー思うようにいかないことがたくさんあったんですね…。(お酒で発散してる!)

小島:ホント疲れてました。東京に浪費されてた感覚。当時付き合っていた今の夫も忙しい人だったので、ストレス発散はお酒飲んで、夜遊びしてみたいな(笑)。具合悪いなと思ったら、薬飲んで乗り越える。その瞬間は楽になってたけど、やっぱりあとに残るものがねぇ。

ーー後でしわ寄せが来ますよね(笑)。

小島:そういうものから開放されたいと思ってました。ホント、生まれ変わりたかった! 都心の自分をリセットしたいって、めっちゃ思ってました!

アクセス考えると、ギリギリ御代田!

ーー具体的に移住を検討したのは、何がきっかけだったんですか?

小島:夫との関係が恋人から家族になって、これから生活していくことを考えた時、私たちにとっての理想の場所はどこなんだろうと。東京で生活しながら、子どもが生まれた後のことを想像すると、「ここで子育てなんて無理だー!」って思っちゃったんです。

ーーなるほど。

小島:ちょうど地方移住も広がりはじめていたタイミングでもあったんです。「カルテット」ってドラマ、知ってますか?

ーー軽井沢が舞台になっているドラマですよね?

小島:そのドラマを見ながら、夫と「軽井沢いいね」って(笑)。

ーードラマで決めてしまったんですか!?

小島:あ、実は、私の母方の実家が北軽井沢の方にあるんです。子どもの頃から軽井沢には来てたので、雰囲気は知ってました。あと東京から近いこともポイントでしたね。だからドラマだけじゃなく、環境とか多角的に考えて軽井沢周辺がいいかなと思ったんです。

「カルテット」は2017年に放送されたテレビドラマ。冬の軽井沢を舞台に、弦楽器をたしなむアマチュア演奏家の30代男女4人が共同生活をしていく様子を、コメディ・ラブストーリー・サスペンスの要素を交えて綴っている。写真はロケ地として使われた軽井沢タリアセン。

ーーでも実際には軽井沢じゃなくて御代田に住んでいますよね?

小島:そうなんですよ。軽井沢もよかったんですけど、調べているうちに佐久とか小諸とか上田にも魅力を感じて…。東信州広域へのアクセスを考えると、軽井沢は少し遠いんです。御代田はギリギリオッケー!(笑)。御代田はどこにでも行きやすいんですよね。

ーー実際御代田町に移住されて、一番の変化はなんでしたか?

小島:フリーランスで働くという選択肢を見つけられたことですね。自分の想いやミッションを掲げて仕事できるようになりました。「来てよかったな」と思うのはそういう瞬間ですね。

ーーパートナーの方も変化はありました?

小島:夫も変わりましたね。表情が明るくなったというか、楽しそうにしてます。軽井沢や御代田の自然が好きみたいで、散歩しているだけなのに「涙が出るほどきれい!」と言ってます(笑)。

ーー感性が豊か…!

小島:どちらかというと、夫のほうがこちらに馴染んでるかもしれないですね。私は今でも「東京帰って友達に会いたいなぁ」と思うことがあるんですけど、夫はそうでもないようです。

家の近くから見える浅間山(小島さん提供)

振り返って気づく。あの頃は「移住ハイ」だった…

ーー小島さんもこちらにかなり馴染んでいるように見受けられますが…?

小島:「しあわせのパン」という映画知ってます? 洞爺湖のほとりで、夫婦二人が家を建てて、パン焼いて静かに暮らす。私の中の移住は、そんなイメージでした(笑)。孤独? 孤立? そんな感じ。だから、移住者同士のコミュニティが作られていることを知って、ちょっとびっくりしました(笑)。

ーーSNSは特にそうですよね。

小島:先日もTwitterで「シミ対策におすすめのケアを知りたい」と投稿したんです。そうしたら、先に移住で来られた方が「移住してきて3年目はやばいよ」と、たくさんアドバイスくれました。

ーー長野県、紫外線強いですからね。SNSでは、「軽井沢移住準備中」とか「○○年から移住」と記されている方多く見かけますし、みんなつながっている。

小島:コミュニティは、あればあるほどいいのではないかなと思います。ただ、一つのコミュニティだけにガッツリ属しちゃうと、視野や情報が狭くなる気はしていますね。

ーーどう関わるかが大切なんでしょうか?

小島:全部が全部ハッピーになれる場所なんて、たぶんないと思うんです。移住者に対して、ウェルカムじゃない雰囲気を感じることもあるし、馴染めてないなと思うこともあります。今までとは違う場所で、自分のアイデンティティを確立するのは結構大変なことだなと、改めて感じていますね。

ーー自分がどうありたいのかが重要になりそうですね。

小島:大変なことはあるけど、移住してきたことは自分の中で肯定したいから、「最高! この暮らし!」ってずっと言ってきました。「移住者だからわからなくて、教えてください」「移住者だから友達になってください」とか、移住者というワードを盾みたいに使ってた気がしますね。

ーー盾にしてきたっておもしろいです。

小島:私、ハイでした。移住ハイ!!

ーー移住ハイ(笑)!

小島:「移住最高!」を一生懸命アウトプットしてきました。移住を満喫するために、アウトドアな体験をたくさんするとか(笑)。今は少し落ち着いて、立ち止まっている。大切なもの忘れてないかな?って、振り返っているタイミングです。

もっと自由でいい。自分らしくいるステップとしての移住

ーーこれからどんなふうに生きていきたいですか?

小島:いろいろなものにあまりとらわれないで生きていきたいと思いますね。もっと自由でいたい自分らしくいるためのステップとして移住をしたので、御代田に定住するとか、こだわらなくていいかなと感じてます。

ーーもしかしたら何年後には「海のあるとこで暮らしたい!」とか言ってるかもしれませんね(笑)。

小島:あるある!! ありそう(笑)。

ーーお仕事ではこれからどんな活動をしたいですか?

小島:なりわいであるまちの広告やさんとして、さらに多くの方をお囃子するのはもちろん。地元の人ともっと関わって、この地域を知る活動をしていきたいと考えています。エンパワーメント事業を通してまちと人をつなぐコーディネートをしていきたいですね。

ーーどういう人たちをターゲットにしているのですか?

小島:主に地域の女性たちや、学生かな。東京に行った学生さんが戻ってきたいと思える、地域の女性たちがじぶんらしく暮らせる環境。そのためのプラットホームづくりです。それこそまちと人をつなぐことかなと思っています。このあたりの学生さん、みんな素直でかわいいんですよね。

ーー移住してきて4年目の小島さんが、若い人に地元に戻ってきてほしいと言ってるのがおもしろいですね。

小島:一度暮らした街って、自分の地元のひとつになっていく、そんな感覚です。うーん、もしかしたら行政との仕事が多いからかも?(笑)。非公認アンバサダーみたいな感じです!

家族写真(小島さん提供)

ーー最後に、「都心の自分をリセットしたい!」と言ってましたけど、移住してリセットされました?

小島:されましたね。せっかく移住したからと、おいしいもの食べて、きれいな水を飲んで、空気の澄んだところに行って…。心が豊かになった感じ身土不二という言葉、ありますよね。

ーー身土不二、人間の体と人間が暮らす土地は一体で、切っても切れない関係にあるという意味の言葉。

小島:そうです。その土地のその季節に採れるものを食べることで、健康になるという考え方。野菜を直売所で買うとか、旬のものを食べるとか、そういったことを大切にしていきたいですね。

ーー長野県は素材もたくさんありますしね。

小島:素材が充実しているからなのか、なんでもいいやとぱぱぱっと買うんじゃなくて、楽しい気持ちで買い物をできるんです。この地域のものを大切にしたい、そういうマインドが生活にもにじみ出てきてる。楽しい気持ちで次の日を迎えられるって、いいですよね~。

さまざまな葛藤がありながらも、地域のコミュニティの中で自分らしいあり方を模索し続けている小島さん。自然豊かな御代田町で、心も身体もリセットされたようで何よりです。小島さんがこの街で、どんなエンパワーメントを引き出していくのか、とても楽しみです。

小島さん、ありがとうございました!

小島美里さんのTwitter

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