軽井沢・佐久平・上田から東京へ! 新幹線通勤のリアルについて聞いてみた
近年、都心からのアクセスのよさや豊かな自然環境、教育環境の充実により、長野県に移住する人が増加しています。「移住したい都道府県」ランキングでも、長野県は2006年以降16年連続1位を取り続けており、今後も移住者は増加することが予想されます。首都圏からの移住を検討する際には「地方に引っ越しても今の仕事を続けられるのか?」を懸念する人も多いはず。今回は、長野県東信地域・通称サンラインエリアから東京への新幹線通勤について、自治体の制度や経験者の声などを交えて紹介します。
【参考】
田舎暮らしの本Web「【公式】2022年版「移住したい都道府県」ランキング/『田舎暮らしの本』読者アンケートで調査!」
https://inaka.tkj.jp/archives/12560/
サンラインエリアが移住先として選ばれるワケ
コロナ禍を追い風にリモートワークが急速に普及している中、ワーク・ライフ・バランスを見直し、理想の暮らしを追及したいと考える人たちの間で、地方移住への関心が高まっています。
2021年1月の総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告 2020年結果」によると、長野県内でもっとも転入超過しているのが軽井沢町の567名。3番目が佐久市の180名。長野県の中でもサンラインエリアの人気ぶりがうかがえます。
「豊かな自然」や「育児のしやすさ」など理由はさまざまありますが、「新幹線が通っていることによるアクセスのよさ」は外せないでしょう。北陸新幹線を使えば軽井沢駅から東京駅まではおよそ64分、佐久平駅からはおよそ73分で移動できるため、都内へも通勤が可能。感染状況によって出社頻度が増えたとしても、「これぐらいの通勤時間なら通勤できる」と思えますよね。
【参考】
総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告 2020年結果」
https://www.stat.go.jp/data/idou/2020np/jissu/pdf/gaiyou.pdf
新幹線通勤を後押ししているサンラインエリアの自治体は…?
自治体でも新幹線通勤を後押しする制度が増えています。仕事を変えずに地方移住したい人にとっては、移住先を検討する際の判断材料になるのではないでしょうか。編集部では、サンラインエリア5つの自治体を対象に「新幹線通勤に関する制度」について緊急調査を実施。回答いただいた自治体の中で、新幹線通勤に関する制度があった佐久市の事例を紹介します。
佐久市の代表的な制度として「佐久市リモートワーク実践者スタートアップ支援金」があります。これは、通勤や顧客との商談などのために新幹線を利用する場合(在来線は対象外)、新幹線乗車券等購入費支援金を月額上限2万5千円(最長36カ月)補助する制度です。
また、佐久市への移住や二地域居住を検討している人に向けた「令和4年度佐久市移住検討者滞在費補助金」という補助金制度もあり、移住前から新幹線乗車券の補助(実費の1/2以内・1回4人まで・上限10,000円まで)を受けることもできます。
※佐久市以外の自治体からも情報を募集しています!
新幹線通勤シミュレーション!
「実際にサンラインエリアから新幹線通勤をする場合、どのようなタイムスケジュールになるのか?」と気になる人もいますよね。朝と夕方の時刻表をもとに、出社・退社のシミュレーションをしてみましょう。東京駅から徒歩5分程度の会社に通勤すると仮定し、上田駅、佐久平駅、軽井沢駅の3つの駅と東京駅間の時間を並べてみます。
満員電車にはもう戻れない…! 着席して快適に出社
まずは朝の新幹線乗車時間を検証します。9時までに出社したい場合、何時発の新幹線に乗れば始業時間に間に合うのかを見ていきましょう。
北陸新幹線 | 上田駅発 | 佐久平駅発 | 軽井沢駅発 | 東京駅着 |
あさま604号 | 6:55 所要時間:1時間29分 | 7:05 所要時間:1時間19分 | 7:15 所要時間:1時間9分 | 8:24 |
あさま606号 | 7:24 所要時間:1時間28分 | 7:34 所要時間:1時間18分 | 7:43 所要時間:1時間9分 | 8:52 |
北陸新幹線あさま604号か606号に乗車すれば8時台に東京駅に到着します。東京近郊から乗車時間約1時間で東京駅まで行ける範囲では、八王子駅が51分、川越駅が55分、成田駅が1時間12分、鎌倉駅が50分。サンラインエリアから東京駅までの通勤は、これら東京近郊の駅から通勤するのとあまり変わらないことがわかります。
寄り道をしなければ、家族団らんの時間にも間に合う
次に、帰りの時間を見てみましょう。
北陸新幹線 | 東京駅発 | 軽井沢駅着 | 佐久平駅着 | 上田駅着 |
あさま625号 | 18:40 | 19:53 所要時間:1時間13分 | 20:02 所要時間:1時間22分 | 20:12 所要時間:1時間32分 |
はくたか575号 | 19:04 | 20:11 所要時間:1時間7分 | 20:20 所要時間:1時間16分 | 20:30 所要時間:1時間26分 |
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あさま633号 【最終電車】 | 22:08 | 23:21 所要時間:1時間13分 | 23:30 所要時間:1時間22分 | 23:40 所要時間:1時間32分 |
勤務終了が18:00の場合、寄り道しなければ20:00前後に駅に着くことができます。
子どもを保育園に預けている場合は、延長保育の時間を確認しましょう。軽井沢町や佐久市、上田市の保育園では、延長保育を利用しても19:00までの預かりが一般的。このため、時短勤務やフレックス勤務などを活用したり、パートナーや地域の人と協力したりしながら、お迎えに間に合うよう仕事を調整する必要がありそうです。
「実際新幹線通勤ってどうなの?」経験者に聞いてみた
ここからは、経験者に新幹線通勤のメリットやデメリット、注意点などを聞いてみましょう。
<インタビュイー>
青木雅樹さん
2020年神奈川県横浜市から御代田町に移住。現在は、都内にあるオフィスに週3日~4日ほど新幹線で通勤している。
――新幹線通勤を始めたきっかけは?
青木:長野への移住を検討する際、新幹線通勤をしている人がいることを知り「自分もできるのでは?」と思ったのがきっかけです。私の会社には新幹線通勤の制度がなかったので、上司に掛け合って一部通勤補助を出してもらえるよう交渉しました。実際に通勤してみると、同僚から「新幹線通勤ってどうなの?」と聞かれることも増えました。興味を持っている人は多いのかなと感じます。
――神奈川県に住んでいた頃と現在では、通勤にどのような変化がありましたか?
青木:朝の通勤に関しては、大きな変化はありません。朝7時に家を出て、佐久平で7時台の新幹線に乗り、9時15分には会社のデスクで仕事を始めています。神奈川にいた頃とスケジュールはほぼ同じですね。帰りに関しては、電車の時間を意識して、仕事を切り上げるようになったのが大きな変化でしょうか。新幹線は終電が早いので、万が一逃してしまってもタクシーでは帰れないので…(笑)。
――新幹線通勤にはどのようなメリットを感じていますか?
青木:満員電車のような窮屈な思いをせず、座ってゆったりと過ごせる点がメリットだと思います。Wi-Fiやテーブル、最近ではテレワークに適したオフィス車両もあるので仕事もできますし、読書をしたりドラマを1本見たりすることもできますね。周囲に気を使わなくてよいのはうれしいです。
――逆にデメリットはありますか?
青木:子どもが発熱したなどの連絡を受けても、早く戻れないことです。在来線よりも電車の本数が少ないので、すぐに移動できずもどかしい思いをしたことがあります。また、乗車時間は以前と変わらなくても移動距離が伸びたことで、最初のうちは体が慣れず少し疲れました。今ではだいぶ慣れてきましたが、リモートワークと通勤は半々くらいが私の中ではちょうどいいかなと思っています。
――新幹線通勤で大変だったことはありますか?
青木:新幹線通勤を始めてから気付いたのは、長野と東京の寒暖差。サンラインエリアは雪が少ない地域ではあるものの、東京と比べると降ります。こちらの天気に合わせダウンジャケットにスノーブーツで出勤すると、東京では浮いてしまいます…。小さく収納できるダウンを選ぶ、重ね着をするなどの工夫が必要です。反対に、出社して長野に帰ってくると今度は車に雪が積もっていて、雪かきをしないと帰れない…ということも。仕事終わりの雪かきはどっと疲れます(笑)。
あと、細かいことですが、軽井沢駅と安中榛名駅の間は標高差があるため、耳抜きを忘れると気圧差で耳が痛くなったり、違和感が残ったりすることもあるので注意が必要です。
――東信エリアから都内への新幹線通勤を検討している人にアドバイスをお願いします!
青木:移住を検討する上で、今後の働き方について考えることは避けては通れません。会社に新幹線通勤の制度がない人も、上司や同僚の理解を得ることを諦めないでほしいです。今は移住する人も増えているので、新幹線通勤ができるよう会社を説得するチャンスでもあると思っています。そのためには、まず平日の通勤時間帯に実際に往復してみるのがおすすめです。状況も把握できますし、「意外とできるかも?」と思えるかもしれません。
また、自宅から最寄りの新幹線駅までの移動についても、所要時間や無料駐車場の有無などを調べておくとよいですよ。
新幹線通勤で新たなライフスタイルを実現できるかも
新幹線通勤には、都内での通勤と違ったメリットやデメリットがあることがわかりました。まずは自分の会社に通勤に関してどのような制度や補助があるのかを調べ、制度がなくても交渉してみることも視野に入れてみましょう。一度新幹線を使って、実際に通勤シミュレーションをしてみてはいかがでしょうか。