登る・食べる・撮る・語る・感動する! 登山ビギナーにこそ伝えたいサンラインエリア山の楽しみ方
すぐそこに山。これは決して誇張表現ではありません。長野県の東側に位置するサンラインエリアは山に囲まれており、四方どこを見ても山。
こんにちは! ライターの宮下です。
上田市に生まれ育った私は、幼いころから家族と山に登っていたので、大人になった今でも山がとても好きです。周りの山を眺めては、「山に登りたいなぁ」と日々呟いています。
ある日の編集部。副編集長の金(移住歴15年)がこんなことを言っていました。
「こっちに来て一度も山に登ったことないよ。そもそも登山って、楽しいの?」
「え!? 今、なんと言いました? それ本気ですか?」
サンライン編集部として由々しき事態ではないでしょうか? こんなに山が身近にあるのに、山に興味のない人が身近にいるなんて…。というわけで、今回はこのエリアの山の魅力に迫るため、上田市在住で登山ライフを満喫している中村亜季さんへインタビュー。登山ビギナーにこそ読んでいただきたい情報を紹介します。
数字で見る長野県の山々
日本の屋根と呼ばれる長野県。日本百名山のうち29座がありその数は全国1位です。3,000メートル峰の数は日本全国で23座あり、その内15座(県境が接している山・12座)が長野県にありこちらも全国1位。さすが山岳県と言われるだけあります。
少し脱線しますが、長野県は県全域の標高自体が高いのです。県内で最も高いところにある役所・役場は、サンラインエリア内に位置する南佐久郡の川上村役場。その標高は1,185メートル。日本一高い建造物ある東京スカイツリーが634メートル、東京で人気の登山スポットである高尾山が599メートルですから、長野県は高いところに位置していることがわかりますね。
長野県山岳総合センターでは、今年11月に「信州の里山・総選挙!(冬山編)」を開催しました。山が多いこのエリアならでは取り組みですよね。先ごろ結果が発表され、サンラインエリア内からも太郎山、独鈷山などが選ばれていました。詳細はこちらをチェックしてみて。
【参考】
しあわせ信州『データで知る信州』
しあわせ信州『3,000m峰の数 日本一!』
長野県民が、登山を身近に感じるのにはワケがあった!
山と言っても、3,000メートル級の山々だけでなく、県内各地には日帰りで気軽に登ることができる山もたくさん。山が身近であるがゆえか、サンラインエリアの小中学校では、学年単位で登山する学校登山という行事があります。長野県山岳総合センターの調査によると、県内の中学校の87%が学校登山をしているという結果が。登山に親しむ一因になっているのかもしれませんね。
さらに信州山カードというものもあります。安全登山の推進を目的に作成され、行政機関や観光案内所、道の駅などで配布。その山の写真や特徴、難易度、警察からのワンポイントアドバイスなどが記載されています。県内の50座のカードがあり、北アルプスなどの高山だけでなく、里山もラインナップ。思わず集めたくなってしまうこのカード、県をあげての山への敬愛が感じられます。
【参考】
長野県山岳総合センター『「長野県中学校集団登山動向調査」のまとめ 』
長野県『安全登山啓発用「信州山カード」ポータルサイト』
山の楽しみ方はそれぞれでいい!
仕事と4人の子育てを両立しながら、自分なりのペースで山を楽しんでいる中村亜季さんに、山の魅力を伺いました。
中村亜季
生まれも育ちも上田市。夫と4人の子ども、ネコ2匹、うさぎ2匹と暮らす。住宅を建てる工務店に勤務し、工務部に所属。登山のほかランニング、冬はスキーも楽しんでいる。自然や環境問題に興味があり、地球に負担のない生活をするため日々奮闘している。
ーー中村さんが山に登るようになったきっかけは?
中村:登山を始めたのは結婚後です。もともと運動が好きなので、夫を誘って近くの山に登り始めました。子どもが生まれてからは登山から遠ざかっていましたが、長男が小学1年生になってから、また家族で山に登るようになりました。
ーーもともと登山に親しんでいたわけではないのですね。
中村:そうなんです。でも登り始めたら、本当に楽しくて夢中になり、山が大好きになりました。今では子ども4人を連れて登ることも多いです。
ーー中村さんは、どんな楽しみ方をしていますか?
中村:山は楽しみ方がいろいろあって、登るだけがすべてではないんです。最近すごく楽しかったのは、山でご飯を食べるいわゆる山ごはんです。携帯ガスコンロと水を持っていってお湯を沸かして山の上で食べるカップラーメンは最高! アウトドアで人気の飯ごうメスティンでご飯を炊いて、温めたレトルトカレーをかけるのもいいですよ。ティーバッグを持参して、沸かしたお湯でちょっとお茶を入れるだけでもなんとも言えないぜいたくな感じがします。
ーー山ごはん、おいしそうですね。
中村:他には頂上で360度広がる景色を満喫したり、友だちとおしゃべりしながらゆっくり登ったりも好きですね。
友人や知人は、テントを担いで縦走を楽しんだり、トレイルランニングでサクッと登ったり、高山植物を見るために頂上までは登らなかったり、景色や植物の写真を撮ることを目的に登ったりしています。本当にいろいろな楽しみ方があるんです。
ーーどれも楽しそうですね。
中村:そうなんです! しっかり準備することは大前提ですが、「絶対こう登らなければならない」というものもありません。例えば山頂まで行こうと思って出発したとしても、体調や天候などの様子で、途中で引き返してもいいんです。
ーー準備する上で、中村さんはどのように山の情報を集めているのですか?
中村:YAMAPというアプリを使っています。山登りする人を対象としたコミュニティサイトで、登った人がどの工程をどのくらいの時間をかけて登ったのか記録を残すことができます。なので、自分が登りたい山に実際に登った人の記録を見て、参考にできます。私も記録していますよ。登山は、計画するときからすでに楽しいんです。山の写真を見ながら、登山ルートと時間を考え、何時に出発すれば、お昼には頂上に着けそうだねとか、盛り上がっています。
ーーやはり準備が大切なのですね。YAMAP以外での情報収集はありますか?
中村:経験豊富な登山仲間から、登山届や山の保険の話などたくさんのことを教えてもらいました。山では知らない人とでも挨拶することが多く、それをきっかけにその場で少し話をして、景色が良い場所を教えてもらうこともあります。実際に山登っている人からの情報はとても役立ちますよ。
この山はぜひ登って! 中村さんオススメ山5選
中村さんに「サンラインエリア内でオススメの山は? 」と聞くと、「全部がそれぞれステキで選べません!」と。そこをあえてお願いし、登山経験が少なくても、または子ども一緒に登ることのできるイチオシの山を5座教えてもらいました。
上田市民憩いの太郎山
上田市の代表的な山で、市内の小学校でも登ることが多い太郎山。登り口は13ルートあり、代表的なルートとして、表参道・裏参道・登山競争用の3つが挙げられる。中でも裏参道は比較的なだらかで初級者向け。標高1,164メートル。上田市・坂城町。
「私は上田市民なので、やはりここは市民憩いの山である太郎山を紹介したいです。家からも見えて、とても親近感がある山です。登り口がたくさんあるので、登る人のレベルに合わせてルートを選べるのも魅力ですね。裏参道の登山口には川が流れているので、登り終えた後、アイシングするのもオススメです」
花や景色を楽しめる湯の丸山
湯の丸高原を代表する、浅間連峰の西側に位置する湯の丸山。花の中でもレンゲツツジが有名で、つつじ平のレンゲツツジ大群落は、国の天然記念物に指定されている。山頂からは、アルプス、八ヶ岳連峰、富士山、浅間山などが望める。 標高(南峰)2,101メートル。上田市・東御市・群馬県嬬恋村。
「湯の丸山は、とにかく花がキレイです。花に詳しくなくても、登りながらかわいらしい花を見るだけでも癒やされます。放し飼いされている牛もいて、とてものどかです。山頂からは360度見渡すことができて、本当に絶景です」
登山道が整備されていて登りやすい子檀嶺岳(こまゆみだけ)
子檀嶺岳の山頂には青木村の田沢・村松・当郷の奥社があり、昔から信仰の山として人々に親しまれている。登山コースは3コースあり、80分から100分くらいで登れる。標高1,233メートル。青木村。
「上田市から青木村方面を見たとき、一番手前にあるのが子檀嶺岳で、こんもりした形からプリン山とも呼ばれています。地元の人が整備してくれている登山道が広くてとても登りやすく、気軽に行くことができます。子どもと登るのもおすすめです。山頂からは上田市街地がよく見えますよ」
ダイナミックで迫力満点の黒斑山(くろふやま)
日本を代表する活火山・浅間山の第一外輪山の最高峰山である黒斑山。高山植物も見ることができる。標高2,404メートル。小諸市・群馬県嬬恋村。
「浅間山を間近に望みたいと思ったら、黒斑山がオススメです。活火山に連なるだけあって、地形がダイナミックで迫力満点です。一部少し急な登りもありますが、子ども一緒に登ることができますよ」
アスレチックのような篭ノ登山(かごのとやま)
篭ノ登山の山頂からは、浅間山から富士山、八ヶ岳、北アルプスはもちろん、遠くは日光山系まで望める。標高は、東篭ノ登山2,228メートル、西篭ノ登山2,212メートル。群馬県吾妻郡嬬恋村・東御市。
「我が家の子どもに人気の山です。至るところに大きな岩が転がっていて、岩を登る感じがまるでアスレチックのよう。東篭ノ登山と西篭ノ登山が連なっていて、池ノ平湿原にも繋がっています。小諸市の高峰温泉から1時間強で登ることができます」